理事長挨拶
日本産業精神保健学会
理事長 黒木 宣夫
日本産業精神保健学会は、2016年4月1日より一般社団法人・日本産業精神保健学会として法人化されて6年が経過し、令和6年8月24日の代議員総会で新体制が発足いたしました。同日開催されました新理事会におきまして私が引き続き理事長に選出されましたので就任のご挨拶をさせていただきます。
精神障害の労災請求件数は、2023年度の請求件数は3575 件(認定件数883件)、2022年度は2683 件(認定件数710件)であり、請求件数・認定件数ともに過去最高を更新しています。特に「パワーハラスメントを受けた」の請求件数は289件(認定件数147)、「上司との対人関係」の請求件数は599 件(認定件数21)と、多くを占めていました。2023年9月に労災認定基準改定で新設された「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(いわゆるカスタマーハラスメント)は請求件数は83件(認定件数52)でした。特に2023年度は、対人関係・ハラスメントを合わせると392件(44.4%)が労災認定されていました。
2021年12月より精神障害の認定基準に関する専門検討会が開催されていますが、2020年4月に厚生労働省から日本産業精神保健学会が入札受諾した「業務上疾病に関する医学的知見の収集に関する調査研究(ストレス評価に関する調査研究)」(田中克俊理事が責任者)を本学会が2021年3月に報告し、その結果を参考に上記検討会で職場の心理的負荷評価表が検討されました。そして2023年9月に労災認定の基準が改訂され、現在、新認定基準によって労災認定業務が行われています。また、ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会が、2024年3月より開始されており、中小企業へのメンタルヘルスの在り方が検討されています。
さて、今後の本学会の運営についていくつかの変更点や改善点がございます。それらにつき説明させていただきます。
1. 学会誌電子化について
学会誌電子化については、第31巻1号(令和5年2月刊行)からJ-STAGEにてフルオープンアクセスで電子化がなされ、田中克俊編集委員長のもと編集委員会が開催され、編集作業が行われています。
2. 学会在り方検討委員会、理事のあり方WGを設置
会活動をさらに活性化することを目的に、定款の見直し、各規則の改定と整備、本学会の理事の在り方、学術集会の運営基準などを含めた検討を行う学会在り方検討委員会を設置することが、2022年6月21日の理事会に提案(神山昭男理事が委員長)され、同年7月9日の代議員総会で承認され、同年11月19日同委員会開催し、調査内容を検討し2023年度にかけて調査が実施されました。そして2023年5月に調査結果の報告書が神山昭男委員長から提出されました。在り方検討委員会報告書には、「推薦理事は残しておくべきと考えるが、役割を明確に依頼することも重要と思われる。」「代議員はすべてに選挙権があるべきという意見も一聴に値する。現状のままでいくならば電子投票を利用して時間と負担を減らすこと」等のいう意見があり、これを受けて、理事のあり方WG(吉村靖司委員長)が設置され、2024年6月6日に第1回会議が開催されました。2025年代議員総会までには、理事選出等の在り方に結論を出す予定です。
3.新委員会設置
本学会には、代議員総会前の時点で産業医部会、精神科医・心療内科医部会、心理職部会、産業看護職部会、精神保健福祉士部会の5つの部会と、治療と仕事の両立支援に関する委員会、編集委員会、渉外委員会、広報委員会、財務委員会、教育研修委員会、表彰選考委員会、会則検討委員会、研究推進委員会、研究倫理委員会、代議員選出委員会、精神疾患と業務関連性に関する委員会、自殺予防委員会、専門職制度委員会、医療従事者の精神保健支援委員会、公務員等のメンタルヘルスに関する委員会の16の委員会が活動、2022年7月9日の代議員総会では、ダイバーシティとインクルージョン推進に関する委員会が山本和儀理事を委員長として新しく設置され、多様化された日本の就業状況を勘案すると時宜を得た委員会設置であり、活動しています。
4. 今後の学会運営に関して
産業精神保健を取り巻く社会情勢の中で、今後、専門職集団としての産業精神保健への関わり、さらには上記部会・委員会が相互に交流、活動することによって、本学会がますますの発展をすることを期待しております。
なお、2024年8月24日に代議員総会、新理事会が開催され、理事長・業務執行理事が選任され、新体制が決定いたしましたので、ホームページの役員一覧をご参照ください。
私どもは、この体制のもと一丸となり、より一層の本学会の活動に専心する所存でございます。引き続き、学会会員の皆様の多大なるご支援を賜りますようお願い申し上げます。
令和6年9月吉日